ボイスサンプルは声優にとっての名刺のようなもので、自分がどのような声優であるか伝えるために必要です。魅力的なボイスサンプルを作れれば、仕事の依頼が来たり、声優オーディションに通過しやすくなったりします。
ここでは、ボイスサンプルの重要性やボイスサンプルを作る目的について解説し、ボイスサンプルの収録方法、編集方法などの作り方、魅力的なボイスサンプルにする方法を解説します。
自分を正しく知ってもらうためにボイスサンプルは重要
ボイスサンプルは「自分がどのような声優であるか?」を相手に伝えるものです。「自分が得意なキャラクターボイス」「実際に依頼する場合のナレーションのイメージ」など、ボイスサンプルだけで多くの情報を伝えることができます。
ボイスサンプルを作る上で最も重要なのは、「相手があなたに仕事を依頼する理由になるか?」や「相手があなたをオーディション通過させる理由になるか?」です。自分の魅力を上手に伝えられるボイスサンプルを作って、相手が求めていることに応えられるボイスサンプルにすることを意識しましょう。
ボイスサンプルを作る目的を明確にする
ボイスサンプルを作る際、「あなたがボイスサンプルを作る目的」を明確にしましょう。たとえば、下記のような目的があります。
- キャラクターボイスの仕事の依頼がほしい
- ナレーションの仕事の依頼がほしい
- 声優オーディションに通過したい
- 声優としての知名度を上げたい
更にボイスサンプルを作る目的を深掘りして、下記のように目的を具体的にしましょう。
- ジャンプ系アニメキャラクターのヒロイン役のような仕事の依頼がほしい
- YouTubeの解説動画ナレーションの仕事の依頼がほしい
- 企業製品を紹介するナレーションの仕事の依頼がほしい
- 洋画吹き替えに強い事務所のオーディションに合格したい
- 声優として知名度を上げるためTwitterのフォロワー数を100人増やしたい
上記のように目的を具体的にすると、「どのようなボイスサンプルを作れば良いか」という目的が明確になります。目的が明確であれば、目的に合わせた台本の選び方や、キャラクターの演じ方ができるようになります。
ボイスサンプルの作り方
ボイスサンプルの作り方を解説します。
ボイスサンプル音声の構成を考える
ボイスサンプルを作る目的に応じて、ボイスサンプル音声の構成を考えましょう。下記はボイスサンプル音声の構成の一例です。
- 自己紹介(自分の所属とフルネームを伝える):5秒
- 商品ナレーション2(丁寧なイメージ):30秒
- 商品ナレーション1(落ち着いたイメージ):30秒
- CMナレーション3(明るいイメージ):30秒
- キャラクターボイス1(明るい高校生):30秒
- キャラクターボイス2(落ち着いた社会人):30秒
- キャラクターボイス3(ファンタジー、迫力のある演技):30秒
- フリートーク、自己PR:30秒
ボイスサンプルは「自分のことを知らない人に興味を持ってもらう」という場合が多いため、1キャラクターあたりの音声は短く、演じるキャラクターの種類は多くすると良いです。
台本を準備する
ボイスサンプル音声の構成に合った台本を準備しましょう。インターネットで「ボイスサンプル台本 高校生」などで検索すると、無料で使える台本が見つかります。
自分が演じたい台本が見つからない場合は、自分で台本を作ってみるのも良いでしょう。また、「ココナラ」や「SKIMA」など個人依頼サービスで、ボイスサンプル台本制作を依頼することもできます。
- 無料で使えるボイスサンプル台本を探す
- 自分で台本を作る
- 台本制作を依頼する
当サイト(Voice Attra!)では、無料で使えるボイスサンプル台本を公開していますので、ぜひご利用ください。
台本を読む練習する
台本が準備できたら、台本を読む練習をしましょう。練習するときも録音して、毎回自分で聞き直して改善することで完成度が高い音声になります。
相手が音声を聞いたときに「音声だけでキャラクターをイメージできるか?」「ナレーションとして依頼したいと思うか?」を意識して練習しましょう。
録音する
ボイスサンプルの録音は、自宅で収録するか、スタジオで収録するかの2種類です。自宅に防音設備があるなら宅録、自宅に防音設備がないなら思い切り演じられるスタジオで収録すると良いです。
- 自宅で収録(宅録)する:宅録環境がある場合
- スタジオで収録する:宅録環境がない、クオリティを求める場合
料金が安いスタジオなら1時間あたり2,000円~4,000円でスタジオを借りられます。音質のクオリティを求めるならスタジオ収録を検討しましょう。
録音した音声を編集する
録音した音声は、ボイスサンプルを聞く人が聞きやすいように編集しましょう。特にホワイトノイズ(薄っすら聞こえるサーッという音)は除去を忘れやすいのでしっかり除去しましょう。
- 複数の音声データを1つのファイル(1本の音声)にする
- 音量調整
- 全体的なノイズカット(ホワイトノイズ、クロマノイズ)
- リップノイズの除去
ボイスサンプルでは、BGMやSE(効果音)は付けないで良いです。ボイスサンプルを聞く人は「あなたの声や演技をしっかり聞いて依頼するか検討したい」と思っています。聞き手にとって、あなたの声以外のBGMやSEは不要な情報となり、耳障りに感じてしまいます。
音声に問題がないか最終確認する(音量、ノイズ)
音声を編集したら、完成した音声の最終確認をしましょう。音量が大きすぎたり、小さすぎたりしないか、ノイズが混じっていないかを確認します。
また、音声確認はスピーカー、イヤホン、ヘッドフォン、パソコン、スマートフォンスピーカーなど、様々な機器で確認すると良いです。機器によっては聞き取りにくかったり、音量が小さく感じたりする場合があるため、その場合は音声を編集し直しましょう。
収録したボイスサンプルを公開する
音声が完成したら、収録したボイスサンプルを公開しましょう。一般向けに公開する場合、できるだけ多くの人に聞いてもらえるように複数のSNSやwebサイトで公開すると良いでしょう。
- YouTube
- 個人依頼サイト(iikoe、ココナラ、SKIMAなど)
また、ボイスサンプルを公開したことはTwitterやインスタグラムなどのSNSで告知すると良いでしょう。ショート動画を作成して、ボイスサンプルの一部をSNSに投稿するのも、自身を知ってもらえれるきっかけになります。
魅力的なボイスサンプルにするには?
魅力的なボイスサンプルにするために、作り方のコツを紹介します。
自分の名前は明るく良い印象を与える
ボイスサンプルで自分の名前を読み上げるときは、明るく良い印象を与えるようにしましょう。また、読み上げ方が丁寧であれば「しっかり者」という印象も与えることができます。
自身の声が「渋い声」「幼い声」「中性的な声」など特徴的な場合は、名前の読み上げ時点で特徴的な声という印象を与えるのも効果的です。
どのような印象を与えたいか明確にする
聞き手に「どのような印象を与えたいか」はボイスサンプルを作る上でとても大切です。「作品のキャラクターに声や印象が合っている!」「ぜひ商品のナレーションを担当してほしい!」と思ってもらえるように、自分自身で相手に与えたい印象を明確にしておきましょう。
ナレーションとキャラクターの両方を収録する
ボイスサンプルはナレーションとキャラクターの両方を収録するのがおすすめです。「キャラクターのみ」「ナレーションのみ」のボイスサンプルだと、聞き手に「この人はキャラクターしかできないのかな?」と思われてしまうからです。
「様々なキャラクターの演技をしたいのでナレーションは入れたくない」ということであれば、キャラクターとナレーションは別の音声ファイルや動画として公開すると良いです。アニメの中でキャラクターはナレーションをする場合もあるため、ナレーションがきちんとできることを聞き手にアピールしましょう。
音声だけでキャラクターをイメージさせる
音声だけで具体的にキャラクターをイメージできるボイスサンプルは、完成度が高いボイスサンプルと言えるでしょう。
下記のように、「女子高生」というキャラクターでもどれだけ具体的に想像できる演技なのかによって、聞き手の評価が変わってきます。
- 「女子高生」
- 「明るい女子高生」
- 「少し不真面目な明るい女子高生」
- 「少し不真面目だけど正義感がある明るい女子高生」
「女子高生」の演技はできても、「少し不真面目だけど正義感がある明るい女子高生」をボイスサンプルで演じられる声優は少ないです。細かく表現してキャラクターをイメージできれば聞き手の評価はとても高くなります。
セリフによって表現を切り替える
1人のキャラクターでも、セリフによって表現を切り替えて、表現の幅を広げましょう。下記のセリフを例に挙げると、前半と後半部分でキャラクターの表情、表現は変わってきます。
「俺は世界一の医者になりたいんだ。でも、俺にはまだ知識も実力も足りない。」
「俺は世界一の医者になりたいんだ。」の部分は夢を抱いている印象を与える演技になるでしょう。
「でも、俺にはまだ知識も実力も足りない。」は能力不足を悔しく思っている印象を与える演技になるでしょう。
このように、セリフによって与える印象を意識して演技することで、魅力的なボイスサンプルになります。
様々な種類のキャラクターを演じる
様々な種類のキャラクターを演じることで、声優として演じられるキャラクターの幅広さをアピールできます。1つのボイスサンプルで、2~3キャラクター以上、できれば5キャラクター程度は収録した方が良いでしょう。
- キャラクターの性別
- キャラクターの年齢
- 声の高さ
- キャラクターの性格(明るい、暗い、優しい性格、厳しい性格、しっかり者、やんちゃ者など)
- リアルなキャラクター、ファンタジーのキャラクター
1キャラクターあたりの音声時間は15秒~30秒にする
1キャラクターあたりの音声の時間は短めに、15秒~30秒にしましょう。短い台本の方が聞き手にとってテンポが良く、短い時間で多くのボイスサンプルを聞けるからです。
声優としての能力をアピールする(方言、英語、早口言葉など)
声優として自信のある能力はボイスサンプルでアピールしましょう。
- 関西弁、九州弁などの方言ができる:台本を方言で読み上げる
- 英語ができる:英語の音声を収録する
- 早口言葉が得意:早口なキャラクターを演じる
目的に応じた複数のボイスサンプルを用意する
ボイスサンプルを公開する目的に応じて、複数のボイスサンプルを用意しましょう。また、「キャラクターボイスの依頼がほしい」という方でも、ナレーションや歌唱サンプルなどは別の音声や動画として複数公開すると良いでしょう。
- ナレーションとキャラクターボイスの両方
- ナレーションのみ
- キャラクターボイスのみ
- 歌唱力のサンプル(歌ってみた動画)
ボイスサンプルは1年~2年で定期的に新しいものにする
ボイスサンプルは1年~2年で定期的に新しいものを収録して公開することをおすすめします。古いボイスサンプルだと、最近活動しているのか、声優としての能力が向上しているのかが伝わらないからです。
また、新しい音声や動画を公開することで、自身を改めて知ってもらえる機会になります。
有名声優のボイスサンプルを参考にしよう
有名声優のボイスサンプルはクオリティが高いだけではなく、ボイスサンプルの構成、キャラクターの順番なども参考になります。
下記は花江夏樹さん(鬼滅の刃 炭治郎役)のボイスサンプルです。
下記は釘宮理恵さん(銀魂 神楽役)のボイスサンプルです。
プロの声優さんのボイスサンプルと、ご自身のボイスサンプルを聴き比べてみて、違いや改善点を探してみましょう。比較してみることで、より良いボイスサンプルを作れるようになります。