声優になるには毎日のトレーニング、そして日々の積み重ねが大切です。ここでは、声優に必要とされる「発声」「滑舌」「演技」の項目ごとに、自宅でできる練習方法「12種類」を紹介します。独学で声優としての基礎を身に着けたい人もぜひ参考にしてみてください。
- 発声のトレーニング6種類
- 滑舌を良くするトレーニング3種類
- 演技のトレーニング3種類
発声のトレーニング
発声のトレーニングを行うと正しい声の出し方が身につき、魅力的な声を出せるようになり、感情表現が豊かになります。
発声練習するメリット
- 聞いていて気持ちの良い声、キレイな声が出せる
- 声の表現の幅が広がり、感情表現が豊かになる
- 音程が安定した声、大きな声を出せる
- 音域が広がり、高い声や低い声を出せる
- 声帯への負担が減って、喉が傷みにくくなる
腹式呼吸の練習
腹式呼吸とは、横隔膜と肋間筋で空気を取り込む呼吸方法です。腹式呼吸ができると取り込む空気量が増えて、声量が増える、声量の調整がしやすくなります。声優を目指すなら腹式呼吸ができるのは必須なので、毎日練習して身につけましょう。
腹式呼吸の練習方法
- 仰向けに寝る
- 片方の手をお腹にあてて、もう片方の手を胸にあてる
- 鼻から息を吸って、お腹が膨らむのを確認する
- 口を「う」を言う形にして、口から息を吐き出す
- 息を吐き出すとき、お腹が凹むのを確認する
- お腹が膨らんだり凹んだりする呼吸になっていれば、腹式呼吸できています
呼吸するときは、早すぎず遅すぎず、普段の呼吸と同じくらいのペースを意識しましょう。何度か繰り返して、お腹で息をする感覚が身についたら、立った状態でもお腹で息ができるように練習しましょう。
リップロール
リップロールとは、唇を閉じた状態で息を吐いて、唇を振動させて「ぷるぷるぷるぷる」と発声するトレーニング方法です。リップロールは、一定量の息を吐き出しやすくなり発声量が安定する、喉の緊張をほぐして喉の負担を減らす効果があります。
リップロールは喉の負担を減らすため、ウォーミングアップとしても効果的です。
リップロールの練習方法
- 背筋を伸ばして正しい姿勢で立って、お腹に手をあてる
- 鼻から息を吸う
- 口を閉じて、力は入れすぎない
- 口から息を出して、唇を震えさせる
- 口から出る空気量が一定になるように練習する
リップロールするときは腹式呼吸を意識して、空気を吐き出す量が一定になるようにしましょう。鼻から息を吸った方が腹式呼吸をやりやすいですが、慣れてきたら口から息を吸って腹式呼吸を意識したリップロールも練習してみましょう。
ハミング
ハミングとは鼻歌のことで、口を閉じた状態で鼻から空気を出して発声することを言います。ハミングを練習すると鼻から抜ける声が出しやすくなり、高音を出しやすくなる、音程が取りやすくなる、滑舌が良くなる、喉を傷めにくくなります。
ハミングの練習方法
- 口を閉じる
- 腹式呼吸を意識して「んー」と言って、鼻を振動させます
- 意識を鼻の奥に移して、鼻の奥の空間を振動させます
- 鼻の奥の空間で発声できていれば、鼻の空間を使ったきれいな響きになります
ハミングするとき、鼻が振動しない場合は鼻に息を当てるイメージで、少し高めの音で発声してみましょう。
鼻の奥の空間で音を響かせることを「鼻腔共鳴(びくうきょうめい)」と言います。鼻腔共鳴のきれいなハミングができると歌も上手くなります。
横隔膜のトレーニング
横隔膜とは、あばら骨の一番下の部分にある薄い筋肉の膜のことです。横隔膜は息を吸うとき、息を吐くときに動くため、声を出すときに重要な役割を果たします。横隔膜を鍛えると声の強弱をコントロールしやすくなり、声のイメージを変えられるようになり、声帯に負担をかけずに発声できるようになります。
横隔膜のトレーニング方法
- 口を開けて「あ」を言う形にする
- 「はっはっはっはっ」と犬が呼吸するように息を吐き出す
- 上記を10秒~15秒続けて、何度か繰り返す
上記のトレーニング方法は犬の呼吸に似ているので「ドッグブレス」と呼ばれます。
鼻濁音の発声練習
鼻濁音とは、「がぎぐげご」の発音を鼻から抜けるように発声した音のことです。鼻濁音で発音した音は「優しい音」「柔らかい音」の印象を与えます。
鼻濁音の練習方法
- 「んー」と長く伸ばして発声します
- 続けて「がー」と発声します
- 「んーがーんーがー」と繰り返し発声します
- 「ん」と「が」の間隔を少しずつ短くしていくと自然に鼻濁音の発声になります
- 次に「ん」と「ぎ」で「んーぎーんーぎー」を繰り返します。
- 上記を「がぎぐげご」の全ての音で練習します。
口から音を抜けるように発声した音は「濁音」と言います。「濁音」と「鼻濁音」を使い分けて、声の表現を豊かにできるよう練習しましょう。
筋トレ(体幹トレーニング)
声優は声が商売道具なので、常に健康な状態を維持する必要があります。健康な体=筋肉が必要で、筋肉があると響きのある声が出せます。筋肉をつけると体力が増えて、長いセリフでもしっかり発声できる、息切れしにくくなるため、筋トレを習慣化しましょう。
筋肉を付けることで出せる声の音域も広がるため、演技の幅が広がり、喉の負担も減ります。
声優に必要な筋トレは、体の胴体部分を鍛える「体幹トレーニング」です。腹筋、胸、背中、股関節の筋肉、肩の筋肉など、胴体部分のことを体幹と言います。(腕、足、頭は体幹に含まれません。)
声優が鍛えるべき筋肉
- 腹筋
- 広背筋
- インナーマッスル(細部の小さな筋肉)
- 表情筋
声優の筋トレで最も効果的なのは「プランク」です。プランクは腕立て伏せのような体勢をを維持するトレーニング方法で、お腹周りの筋肉、腹横筋、インナーマッスルを鍛えられます。
プランクのやり方
- うつ伏せになる
- 腕を肩幅と同じくらい開いて、「ひじ」と「こぶし」を床に付けるようにして上体を起こす
- 足のつま先を立てて、下半身を起こす
- 「頭」から「かかと」が一直線になるようにする
- その状態を20秒間キープする
- 10秒間休憩する
- 上記を3セット行う
プランクは「頭からかかとが一直線になった体勢」を維持しないと筋トレ効果が少なくなります。そのため、20秒間キープが難しい場合は、体勢をキープする時間を短くするか、休憩時間を少し長めに取りましょう。
また、筋トレだけではなく、ランニング、水泳、縄跳びなどの持久力を付ける「有酸素運動」は心肺機能を向上させる効果があります。筋トレと並行して、持久力を付けるトレーニングも習慣化しましょう。
滑舌を良くするトレーニング
滑舌を良くするには「母音」と「子音」それぞれのトレーニングが大切です。特に母音の発声は子音の発声に影響するため、母音の発声はしっかり練習しましょう。
- 母音(あいうえお):口の形で発声する
- 子音(かさたなはまやらわ等):舌、唇、歯を使って発声する
「さ行の発声が苦手」「ら行の発声が苦手」など自分で苦手な言葉がわかっている場合は、特定の子音の発声を意識して練習する、早口言葉を練習するのが効果的です。
表情筋を鍛える
表情筋とは「口」「鼻」「目」など、顔全体の表情を作る筋肉のことです。発声するときは顔全体の筋肉の使い方で表現の幅が広がるため、表情筋のトレーニングは声優にとって大切です。
表情筋を鍛えるトレーニング3種類
- 笑顔で笑う(口の形を変えて、色んな笑い方を試してみましょう)
- 「驚いた顔」「悲しい顔」「悩んだ顔」など、色んな表情を5秒~10秒間キープする
- 「あ」「い」「う」「え」「お」を大げさな表情で5秒~10秒間キープする
口角を上げる
口角とは唇の右端と左端のことで、笑ったときに上に釣り上がる部分です。口角を上げると口の中の「軟口蓋(なんこうがい)」が引き上げられて、口の中で音が響いて「共鳴」して魅力的な声に聞こえるようにます。
また、口角を上げると口が大きく開くようになり、音の発声が鮮明になります。つまり、言葉の音が正しく発せられるようになり、滑舌も良くなります。
口角を上げるトレーニング
- 割り箸を横向きにして、歯で軽くはさむ
- 「いー」と言いながら、口角が横ではなく上に上げるように意識する
- 割り箸の高さよりも口角が上にきた状態で30秒キープする
- 表情をゆるめて、20秒~30秒ほど休憩する
- 上記を3セット行う
上記の練習方法は、割り箸の高さが口角を上げる高さの目安になります。口を横に広げるのではなく、上に引き上げることを意識して練習しましょう。
アーティキュレーション
アーティキュレーションとは、音と音の繋がりや、音の区切りのことです。アーティキュレーションは日本語に直訳すると「滑舌」や「明瞭な発音」を意味しますが、英語では「はっきりと区切る」というニュアンスが含まれています。つまり、1音1音の言葉の聞き取りやすさのことを意味します。
言葉を正しく伝えるには歯切れの良い発音が必要です。声優やナレーター、ニュースキャスターなどには、発した音の聞こえやすさが求められます。
アーティキュレーションのトレーニング方法3種類
- 「あめんぼの歌」1音ずつ丁寧に発声する練習をする(あめんぼ赤いなあいうえお)
- 早口言葉を1音ずつ丁寧に発声する
- 文章を1音ずつはっきりと発声して読む
母音の発声練習
母音とは「あいうえお」のことで、口の形を変えることで発声が変わります。母音は全ての言葉の基本となるため、滑舌を良くするには母音の発声練習が大切です。
母音を交互に言う練習
- 「あ」と「お」を交互に言う
- 「あ」と「う」を交互に言う
- 「い」と「う」を交互に言う
- 「い」と「え」を交互に言う
- 「え」と「お」を交互に言う
また、文章を母音だけで読むのも母音の発声トレーニングとして効果的です。やり方は、例として「こんにちは」を「おんいいあ」と母音だけで読むだけです。実際の文章を母音だけで読むので、様々なパターンの母音の移り変わりをトレーニングでき、台本のセリフを読むときにも直接的に効果を感じやすいトレーニングと言えます。
早口言葉の練習
早口言葉は音と音の繋がりを正しく発声する練習です。「隣の客はよく柿食う客だ」を例に挙げると、「の」から「きゃ」の繋がりや、「く」から「う」の繋がりなど、言いにくい部分が複数含まれています。言いにくい言葉の繋がりを1つの文章として言えるようになることで、様々な音の繋がりを正しく発声できるようになります。
早口言葉の練習で最も大切なのは、口に意識を集中させて、1音1音をしっかり丁寧に発声させることです。早口言葉を練習する目的は、口を動かしにくい文章でも噛まずに言えるようにすることです。滑舌を良くするには、最初はゆっくり正確に言えるようにして、徐々に早く読めるように練習するのが効果的です。
練習方法の感覚を掴むために、下記の例題をゆっくり丁寧に読んでみましょう。
- 生麦 生米 生卵
- 裏庭には二羽ニワトリがいる
- 赤パジャマ青パジャマ黄パジャマ
演技のトレーニング
演技のトレーニングは、キャラクターの性格、人格、心情を表現するために必要です。声優は声だけでキャラクターを表現して、視聴者に物語やシーンを伝えることが求められます。
- キャラクターの性格を声で表現する
- キャラクターの感情を声で表現する
- キャラクターがまるで生きているように自然に見せる
演技力は声優自身のリアルな経験で鍛えられます。たとえば、弁護士のキャラクターの役は弁護士を経験したことがある人が一番リアルに表現できます。また、ドラマ、アニメ、小説など、物語に触れてキャラクターを理解することも演技力を鍛える練習になります。
朗読の練習
朗読の練習は、物語からキャラクターの心情を読み取って表現する練習です。キャラクターのセリフがある作品を選び、セリフ以外の文章もナレーションの練習として読んでみましょう。
朗読の練習では、男性と女性キャラクターどちらも練習すると、演技の幅を広げられます。また、同じセリフを性格や性別が違うキャラクターだとどういう風に表現するかを考えて朗読するのも演技の練習になります。
感情表現の練習
感情表現は喜怒哀楽を声で表現して、シーンに応じて感情の強さをコントロールする必要があります。キャラクターが少しだけ悲しいのか、とても悲しいのかで声の表現も変わります。
- 同じセリフでも感情表現(喜怒哀楽)を変えて練習する
- 少しだけ怒った言い方、とても怒った言い方など、強さを変化させて練習する
- 音の高さを変化させて練習する(高い声、低い声)
- 別のキャラクターならどんな言い方をするか考えて練習する
アフレコの練習
アフレコの練習は、アフレコでクオリティの高い収録をできるようにする練習です。セリフを正しく発声して、キャラクターになりきりシーンや感情を理解して表現できるようにトレーニングしましょう。
アフレコの練習をする際は、アニメや映画のシーンの一部を繰り返し練習するのが効果的です。下記のように、好きなアニメや映画のシーンを練習してみましょう。
- セリフを紙にメモする
- セリフを聞き取りやすく言えるように練習する
- 物語のシーンを読み取り、緩急、リズム、間の取り方を考える
- キャラクターの感情表現を加えて練習する
- アニメや映画の映像に合わせて録音する
- 録音した音声を映像に合わせて、良くできた部分と悪い部分を評価する
- 練習と録音を繰り返して改善する
その他の練習
発声や滑舌の練習以外の練習方法を紹介します。
普段の生活でも声を出して練習する
普段の生活で見かけた文字を声に出して読むだけでも、発声や演技の練習になります。商品パッケージの文字、町中の看板の文字など、文字を見かけたら声に出してみましょう。
また、漫画を読むときは音読する、アニメやドラマを見ているときはセリフをマネして、普段からトレーニングを意識しましょう。
漢字の読み方を覚える
アニメやナレーションの台本では、難しい読み方の漢字も出てきます。漢字の読み方がわからないと仕事がスムーズに行えないため、高校生レベル~少し難しいくらいの漢字は読めるように勉強しましょう。
漢字の読み方は時間が経つと忘れてしまうこともあるため、1日20種類覚える、復習するなど目標を決めて、毎日の習慣にしましょう。漢字練習のアプリを使用すると、自分が苦手な漢字なども繰り返し復習できます。
トーク力を鍛える
声優やラジオやイベントで話す機会があるため、トーク力はある程度鍛えておいた方が良いです。
また、仕事を行う上で現場のスタッフの人たちと仲良くなれれば仕事もスムーズに進めやすいです。仲良くなるための術、コミュニケーション能力としてもトーク力を鍛えた方が良いでしょう。
- ラジオやテレビで芸人やタレントのトーク術を学ぶ
- YouTubeでトーク力を伸ばす方法を調べる
- 普段から人を楽しませる話し方を実践する
喉のケア
喉は声優の商売道具なので、喉のケアはしっかり行いましょう。
- 睡眠をしっかり取る
- 風邪やインフルエンザの予防をする
- うがいを習慣化する
- 喉が乾燥しないようにする(喉スプレー、濡れマスク等)
- 喉を休ませる時間を取る
声優トレーニング用アプリを活用しよう
声優のトレーニングで使うと便利なアプリを紹介します。
- 録音アプリ
- アフレコのアプリ
- 声の音程(ピッチ)のずれを測定するアプリ
- 早口言葉のアプリ
- 滑舌チェックアプリ
ボイストレーニングは受けたほうが良い
このページでは声優になるための練習方法を紹介しましたが、本気で声優を目指すならボイストレーニングを受けた方が良いです。ボイストレーニングではプロの講師から客観的なアドバイスをもらえるので、自分では気付きにくい発声や演技も改善できます。
ボイストレーニングは1回だけでも受けられる単発のレッスンや、オンラインレッスンもあります。月に1回~2回でもボイストレーニングを受ければ、声優になるために必要な技術を少しずつ鍛えていけるでしょう。